フィリピン大学ディリマン校のコミュニティ開発学部のすすめ

フィリピン大学ディリマン校 (University of the Philippnes Diliman、以下UPディリマン)は、フィリピンの東大とも呼ばれているマニラ首都圏の大学です。

 

私は2018年から2019年までUPディリマンに留学していました。UPディリマンを選んだ理由の一つとして、フィリピンの社会問題、貧困、開発援助などについて学べる学部があることが挙げられます。その学部が、コミュニティ開発学部(College of Social Work and Community Development)です。

私が留学していた時は、コミュニティ開発学部の授業は留学生から割と人気が高かった印象です。そのため今、フィリピン留学を検討している日本人大学生の中にも、コミュニティ開発学部に興味を持っている人がいると思われます。本記事では、コミュニティ開発学部の概要とその授業(私が履修したもの)について紹介してみます。

ちなみに、冒頭に述べたように私は2018-2019年に留学した人間です。この記事に書かれている情報はその時のものです。今は色々と変わっているかもしれません。違っても責めないでください。参考程度にお読みください:)

UPディリマンの像

UPディリマンといったらこの像!

 

1.UP Dilimanのコミュニティ開発学部とは?どんなことが学べる?

コミュニティ開発学部の正式名称は、College of Social Work and Community Development(CSWCD)です。

そして、この学部の中にコミュニティ開発 (Department of Community Development)、ソーシャルワーク(Deaprtment of Social Work)、女性と開発学(Department of Women and Development Studies) の3つのコースがあります。コミュニティ開発とソーシャルワークは、学部から博士までのコースで、女性と開発学は修士以降のコースです。

コミュニティ開発学部は、開発学、社会問題、国際協力、ソーシャルビジネスなどに興味のある人におすすめです。

学部の資料によると、ソーシャルワーカーを育てるための学部だそうですが、ソーシャルワーカーを目指していなくても履修することができます。なんとなくフィリピンの社会問題に興味があるな、コミュニティ開発って何だかよく分からないけど面白そうだな、くらいの人でも履修できるような基礎的な授業もいくつかあります。

この学部の授業の魅力は何といってもフィールドワークがあること!私の確認した限りどの授業においても、教室の講義に加えてフィールドワークがあったり、フィールドワークをベースとした授業だったりします。

 授業または先生によってどこに行くか、何をするかは違いますが、私が履修した授業では、スラム街やマニラ郊外の貧困地域などを訪れました。

2.授業の紹介

私が履修した3つの授業の内容について紹介します。

CD11 (Introduction to Community Development)

最も基礎的な授業。コミュニティ開発の概念や手法などについて学びます。

フィリピンにおける様々なコミュニティの形について、社会構造、経済、政治、文化、歴史など様々な面から学び、分析しました。ほぼ毎回課題出ましたが、課題の読み物が私のとってはかなり難解で大変だった記憶があります。課題の読み物を完璧に理解していなくても、ふわっと雰囲気がつかめていれば授業にはついていけました。課題に比べ、先生の講義はずっとわかりやすかったです。

CD11のフィールドワークは2回ありました。1回目では、マニラのSM City Sta. Mesaというショッピングモールの近くの橋の下にあるコミュニティを訪問しました。薄暗い橋の下、川のすぐ横に人々が住んでおり、雨季は洪水の被害が大きい地域でした。

グループに分かれて、家庭訪問をし、生活や家族、コミュニティについてのインタビューをさせてもらいました。

 

CDのフィールドワークで訪れた橋の下のコミュニティ

橋の下のコミュニティ

橋の下のサリサリストア

コミュニティ内にお店(サリサリストア)もあります


2回目のフィールドワークでは、マニラ郊外のSouthvilleという地域を訪問しました。その地域は、relocation site(再居住地)と呼ばれ、政府の政策によって移住を余儀なくされた人々が住む地域です。マニラ首都圏における道の拡張、公共交通機関の拡大などの政策のため、その地域に住んでいた人々は強制的に別の場所に移り住むことになるのです。再居住地では、生活費が比較的安いと言ったメリットもありますが、都心部から離れているため仕事が無い、仕事場が遠いなどといったデメリットもあります。

ここでも、グループに分かれて家庭訪問をし、インタビューをさせてもらいました。

 

フィールドワーク後の授業では、フィールドワークに関するレポート課題や、ディスカッションがありました。


CD100 (Philippines Society and Community Development)

フィリピンの歴史、経済、政治などの状況や課題ついて、開発と紐づけながらマクロな分析を行います。シラバスを見ると、CD11と内容が被っている部分も多いのですが、先生が違う人だったので、また違ったことを学ぶことができました。

課題としては、レポート、大きめのプレゼン、課題図書のレビューなどがありました。プレゼンは2人組で行いましたが、留学生は、必ずフィリピン人とペアにしてもらえたため、沢山助けてもらいました。

CD100でも、2回フィールドワークがありました。1回目は農村部の貧困地域、2回目は都市部の貧困地域を訪問しました。

1回目のフィールドワークでは、UPから南に車で2、3時間ほど行ったことろにある、Barangay Layong Mabilogという村に行きました。公共交通機関は全く無い村で、人口も少ない地域でした。グループに分かれて、家庭訪問をし、インタビューをさせてもらいました。

フィールドワークで訪れた農村部(川で洗濯している様子)

農村部でのフィールドワーク(川で洗濯している様子)

2回目のフィールドワークでは、マニラ郊外にある、Towervilleという地域を訪問しました。この地域も、CD11で訪れたSouthvilleと同じように再居住地であり、住民の多くが貧困層です。Towervilleでは、韓国のCAMP (Center for Asian Mission for the Poor Asia Inc.) というNGOが職業支援、教育支援などの活動を行っています。

フィールドワークでは、CAMPの活動を見せていただき、さらにCAMPを通して現地の人々のお宅にホームステイをさせていただきました。生活のリアルを知ることができた非常に貴重な体験でした。ホームステイ先のお母さんは、英語があまり話せず、私はフィリピン語があまり話せずでお母さんとは大した会話ができませんでしたが、私の好きなフィリピン料理を聞いて、作ってくれるような非常に温かい方でした。

CDのフィールドワークで訪れた町

訪問した町の様子

ホームステイ先の近くの教会

ホームステイ先の近くの教会

CD112 (Gender and Development)

開発におけるジェンダーの概念、手法、方針について学びます。

フィリピンは、LGBTがオープンな国です。私にもゲイの知り合いが何人かいます。また、ジェンダーギャップ指数の世界ランキングにおいても2020年は16位、2018年は8位であり、世界的に見てもジェンダーの平等化が進んでいる国です。ちなみに日本は2020年121位、2018年110位です。(Global Gender Gap Report_2020Global Gender Gap Report_2018参照)

フィールドワークでは、フィリピン最大のスラムと言われているトンドを訪問しました。グループに分かれて家庭訪問をし、コミュニティや生活などについてのインタビューをさせてもらいました。

また、お土産としてミスワ(Miswa) というフィリピン料理の材料を持っていき、訪問先のお宅のお母さんと一緒に料理、食事をしました。

フィールドワークで訪れた家族と一緒に食べたフィリピン料理(miswa)

Miswa。見かけによらず(失礼ですね)美味しかったです。

CD112の授業の最後は持ち寄りパーティー。ケーキを持ってきてくれたおが居ました。

CD112の授業の最後は持ち寄りパーティー。ケーキを持ってきてくれたおが居ました。


 

3.コミュニティ開発学部の授業の調べ方、選び方、履修の仕方

 コミュニティ開発学部の概要、授業については以下のリンクから確認することができます。

https://our.upd.edu.ph/files/catalogue/CSWCD.pdf

537ページから学年、学期ごとのカリキュラムなどが書かれていますが、交換留学生、短期留学生などは、カリキュラムは気にせずに好きな授業を取ることができます。

また、授業一覧は544ページからになります。1から始まる番号の授業が学部の授業になります。

授業の説明にPrereq: と書かれているものは、その授業を取る前に履修している必要がある授業です。例えば、CD122を履修するには、CD121(3unit)を履修済みであることが条件です。2学期間留学する場合は、Prereq: をしっかり確認して計画的に授業を履修すると良いです。

しかし、留学生の場合、Prereq: を満たしていなくても交渉次第では履修できるかもしれません。試したことは無いので完全に予想ですが。フィリピンは交渉次第でどうにかなることも多いです。この授業をどうしても取りたいんだ!!という熱が教授に伝わればどうにかなるかもしれません。。

授業番号が2または3から始まる授業は、修士や博士の授業です。学部の留学生が履修できるのかどうかは私にはわかりません。履修したい場合は学部の先生に聞いてみてください。

 

次に、履修したい授業が自分のいる学期に実施されるかどうかは以下のリンクから検索することができます。

UP CRS - Schedule of Classes

検索欄にCDと入力すれば、その学期に実施されるすべてのCD (Department of Community Development)の授業がヒットします。

同じ授業名でもいくつか種類があるものがあります。例えばCD11はCD11 CD-1からCD11 CD-5まであります。友達と一緒がいい、特定の先生を希望するなどの意見があれば履修登録の時に伝えた方が良いですが、無い場合は教授の判断で適当に登録されます。

履修登録は、履修登録機関に学部棟に行って行う必要があります。アナログです。。学部によっては、オンライン申請のみで履修登録が完了する場合もありますが、コミュニティ開発学部の場合、2019年時点では学部棟に行かないと登録できませんでした。

履修登録の方法は、UPの留学生向けオリエンテーションなどで説明してもらえますので、日本を発つ前は特にすることはありません。

4.まとめ

 以上、フィリピン大学ディリマン校のコミュニティ開発学部の概要、紹介してみました。私が留学していたのは2018年から2019年なので、今は変わっている部分もあるかもしれません。注意してください。

そして、少しだけ、私がCDの授業を通して感じたことを書いておきます。

私が履修した3つの授業全体について言えることは、どれもフィリピンの社会構造や文化、格差などについて学ぶことができる、非常に興味深い授業だったということです。

フィールドワークでは、外国人である私が個人で行くのは難しいような場所に行くことが出来、そこに住む人々の暮らしをこの目で見て、生の声を聞くことができました。貴重な経験だったと感じます。

ちなみに、貧困地域の家庭でさせてもらったインタビューは、ほぼフィリピン語で行われました。私は、あまり理解することができませんでした。そのため、その場で同じグループのフィリピン人に訳してもらったり、あとから英語訳をタイプしたものを送ってもらったりしていました。ありがたいです。

授業は、基本英語でしてくれますが、先生によっては、よくフィリピン語が混じります。理解できないときは質問しましょう。

 

 

フィリピン語豆知識

UP DilimanのDilimanって何だと思いますか?

Dilimanという地名はかつてこの地域が森だったことに由来しています。Madilim (Dilim)とはフィリピン語で暗いという意味の形容詞です。

ではanは何かというと、場所を表します。

つまり、Dilimanは暗い場所という意味になります。かつては森であり、木が生い茂っていて暗い場所だったということに由来しているそうです。

ケソン市にある博物館のガイドさんが教えてくれました。

ちなみに、UPのキャンパスはDiliman校だけではなく、UP Manila, UP Los Baños, UP Ilo Ilo etc…と沢山あります。

フィリピン語は、簡単な言語ではありませんが、少しでも分かるようになると面白いのでフィリピンに留学する場合は、勉強してみることをお勧めします:)UPディリマンには留学生向けのフィリピン語の授業もあります!